マジシャンのせいでイジメを受けた話

高校2年の夏、俺はいつものように電車で学校へと向かっていた。

満員電車とまではいかないが、人がたくさん居たのを覚えてる。

暑さに耐えながらボーッと吊り革を握っていると、隣のオッサンが汗だくになりながら腹を押さえているのが視界に入った。

 

腹の調子でも悪いのだろうか。声をかけようかと思ったその瞬間、オッサンの方から俺に話しかけて来た。

 

オッサン「すみません...僕、マジシャンでして」

俺「え?あ、はい」

 

突然の展開に、俺は驚いた。

 

オッサン「マジック見て頂けますか?」

俺「え、ここでですか?まぁ、いいですけど」

オッサン「ありがとうございます」

 

オッサンはそう言うと、いきなりズボンとパンツを下ろし始めた。

 

俺「!?」

オッサン「今から僕がウンコを漏らすので、お好きな所でストップと言ってください」

 

カードマジックみたいな事を言ってきた。

いまいち状況が飲み込めないまま、オッサンは盛大にウンコを漏らし始めた。

 

ブリ!ブリブリ!ミチチチチチチ!

 

俺「おわーーーーーー!!!!!!ストップ!ストップ!!俺が悪かった!!何だコレ!?臭っ!!おわー!!!!!!!」

周りの客もその音と匂いに気づき、ザワザワし始めた。

 

オッサン「では僕が今出したウンコを覚えて下さい」

 

地獄だ。今日会ったばかりの知らんオッサンが出したウンコを覚えなくてはいけないなんて。

あまり直視したくないが、言われた通り俺はウンコを見つめ、覚えた。こんなサイコパス野郎に逆らうと、どうなるかわかったもんじゃない。

 

オッサン「ではいきますよ。3,2,1,ヨイショ!」

 

クソを漏らしといて何がヨイショだ。そう思った矢先、先程オッサンが漏らしたウンコが一瞬にして姿を消したのである。

 

俺「あれ!?どこ行った!?」

オッサン「カバンの中を見てみて下さい」

 

入っていた。しかも直で。最悪だ。数学の教科書にベッタリとウンコが付いていた。

 

オッサン「これがイリュージョンです」

 

殺してやろうかと思った。

というか俺のカバンに最初からウンコなど入っていなかったので、カバンにウンコが入ってる時点でオッサンの仕業に決まってる。ガン見して必死に覚えた意味が全く無かった。

そして、覚えて下さいと言われなくても、あの時のウンコを俺は一生忘れはしないだろう。

 

この日から、俺は数学の授業が始まるたびにイジメられる様になった。「次の授業なんだっけ?」と聞くたび、「ウンコだよ」と答えられる様になった。俺はそれから人と会話するのが怖くて仕方ない。

 

あの時のオッサン、このブログを見てるか。

お前の得意なイリュージョンで、

この俺をこの世界から消しておくれ。

 

叶わぬ願いは今日もため息へと変わり、白い息となって消えていく。

 

母さん、

 

 

北海道の春はもうすぐそこまで来ています。