教習車で勝手に日本一周した話

 

高校卒業直後、車の免許を取得しに自動車教習所に通い始めた頃の話です。

僕の担当の先生が藤川先生という女の先生だったんですけど、めちゃくちゃ嫌な先生だったんですよね。口癖が、「ちょっとちょっと。そんな事も出来ないんだったら息を引き取った方がいいわよ」でした。

 

ここで喧嘩をしてしまえば卒業するまでめちゃくちゃ気まずいドライブになってしまうと思い、逆に仲良くする事にしました。

しかし、仲良くなるにはイマイチ時間が足りません。

 

そこで僕は、先生が来る前に助手席のブレーキを勝手に外し、教習車で日本を一周するという暴挙に出ました。「暴挙」という言葉の見本です。

 

作戦決行の日、何も知らない藤川先生はアホ面を下げいつものように「はい、じゃあ今日もよろしくね。出来無さ杉君」と言いました。

茹でタコのような顔色&般若のような形相で僕はハンドルを握ります。

今に見てろ。仮免すら受かってないド初心者の俺が運転する日本一周旅行をとくと堪能しろ。

 

本来、教習所内でS字クランクをやる予定だったのにも関わらず僕はアクセル全開で道路を飛び出しました。

「ちょっとちょっと!何やってんの!あれ!?ブレーキが無い!どういう事!?」

大慌てで僕の肩を揺する藤川先生。

 

「先生、これから日本を一周します」

「は!?何それ!聞いてないんだけど!」

「ブレーキは貴方の実家に送ってあります」

「その行為の意味は何!!!」

 

高速道路に乗り込む俺。

先生「合流、気をつけてよ」

俺「心配してくれるんですね」

先生「自分の身の危険を心配してんのよ」

俺「ふん、可愛くねー女...」

先生「そのセリフ、リアルで聞くとめちゃくちゃキショいわね」

 

まぁ、こんな感じでなんやかんやあって日本一周しましたね。ええ。オチ考えてませんでした。どうしようかな。

 

藤川先生が、今の嫁です。

これでいきましょう。

 

日本一周終わったあとも、藤川先生は今も相変わらず助手席に乗っています。

あの時外したブレーキはリングに形を変え、彼女の薬指にあります。