あの日、俺の馬が見た物
高校を卒業して間もなく、俺は世界を旅する冒険家になった。そこで出会った一頭の馬。奴の名はウマウーマ・ウーママ。今回はそのウーママとの思い出をここに記そうと思う。
サバンナで、身体の至る所に傷を負っていたウーママを俺は放っておけず、日本に連れ帰ることにした。
しかし、持ち家の無い俺は自宅で飼うことが認められず、競走馬として引き取られる事になった。別れ際のウーママの寂しそうな顔を見たあの日、俺は騎手になる事を誓った。
次の年、俺は見事騎手となり競走馬に跨がる事が認められた。1年ぶりにウーママと再会。
しかしウーママは結構な年齢で、競走馬として活躍出来るのは今年で最後だった。
一度で良いから、何とか優勝させてやりたい。
周りに比べ圧倒的に経験値の少ない俺とウーママが1着を取るということは、そう容易い事ではなかった。
数ヶ月経ち、レースを重ねるごとに現実を思い知らされる。1着どころか、5着以内に入る事さえ出来なかった。
昼間のように明るい月光を放つ夜、俺はウーママにこう言った。
「なぁ、お前は何かに勝った事、1度でもあるか?俺は無い。何となく始めた冒険家というのも名ばかりで、何も考えずただフラフラしてただけだ。得たものなんて、お前との出会いだけだよ」
ウーママはただコチラをじっと見つめていた。
「ウーママ。次が俺たちにとって最後のレースだ。俺らに賭けてくれる奴なんて居ないだろうが、最後に一泡吹かせてやろうぜ」
そう。次のアナル記念が俺たちにとっての最終レースだった。もうチャンスは無い。どうしても先頭の景色って奴をウーママに見せてやりたかった。
それから1ヶ月、とうとうアナル記念当日を迎えた。どことなく、ウーママの目つきがいつもと違う気がする。やけに落ち着いたまま静かにゲートイン。
「さぁ〜!間もなくアナル記念、レースが始まります!」
俺はウーママとの出会いを思い出していた。
ウーママはただジッと前を見つめている。
次の瞬間、一斉にゲートがオープンした。
「さぁ〜!始まりましたアナル記念!まず先頭に出たのはキンタマウンコ!」
俺達は今日も後方に居た。
「なぁ、ウーママ聞こえるか。この前、得たものはお前との出会いだけだって言ったけど、訂正するよ。お前は俺に騎手としての夢を与えてくれた。生きる喜びを与えてくれた。ありがとうな」
俺は今回のレースも、半ば既に諦めていた。
しかしレース後半に差し掛かった次の瞬間、感じたことの無い風を全身に浴びた。まるでターボがかかったように前へ躍り出る。
「おおーっと!後方からウーママが出てきました!何という事でしょう!凄まじいスピードです!どんどん抜かしていきます!」
ゴール5m手前、ついに1着に。
「今、ゴール致しました!1着はウマウーマ・ウーママです!誰がこの結末を予想したでしょう!」
俺は頭が真っ白になりながらも、何度もガッツポーズをした。
そこへ、数人の係員が俺たちの元へやってきた。
「丸谷さん、申し上げにくいのですが今回のレース、失格です」
急な展開に、再び頭の中が真っ白になる。
「はい....?どうしてですか....?俺達は正々堂々戦いましたよね...?」
「あなたが乗ってるその馬、シマウマだからです」
たしかに言われてみると、黒と白の縞模様がある。今まで全く気が付かなかった。気にした事も無かった。そういうデザインの馬なんだと思っていた。何か、急に冷めた。
出会った当初、身体の至る所に傷を負っていたのは恐らくライオンに襲われたからだろう。よく考えるとサバンナにいるのは大概シマウマだ。点と点が繋がって行く度に、段々怖くなっていった。
「シマウマだけに、ここで白黒付けよう。ウーママ、お前はシマウマなのか?答えろ」
「自分、シマウマですよ」
ウーママはシマウマのくせに、当たり前のように返事をした。
俺と係員は驚きのあまり声が出せない。
そのまま無言でウーママとは別れ、今に至る。
恐らくあのシマウマはサバンナに戻った事だろう。
このブログを以前から読んでいる方はもう知ってると思いますけど、この嘘松ブログ、後半になればなるほど雑になってきますからね。
次から直します。では。